トップコラム「怪しき者」通報せず? 韓国から

「怪しき者」通報せず? 韓国から

 先日、大学で教鞭(きょうべん)を執る日本の知人と会食する機会があった。知人は自身の思い出話として、1970年代末、韓国に長期滞在した際に経験したエピソードを紹介してくれた。ある地方都市で旅館に泊まったら、間もなく地元の警察官が訪ねてきた。どうやら宿の女将(おかみ)から「日本から来たというのに韓国語が話せる怪しい男がうちに泊まっている」という通報を受け、「対北捜査官」(北朝鮮のスパイ活動などを取り締まる警察官)が乗り出してきたのだという。

 当時、韓国は反共主義を国是としていた朴正熙政権下。「反共」どころか「滅共」という強烈な言葉もあった時期だ。それくらい北朝鮮からのスパイに多くの国民が敏感になっていた。捜査官は知人に職業や訪韓目的などを一通り尋ね、容疑が晴れたと思うと、「ところで給料はいくらか」と聞いてきた。これは「個人的関心事だった」(知人)ようだが、その後、捜査官は最初は勤務中だからと言って固辞していたお酒を「じゃあ一杯だけ」と言いながら飲み始め、最後は名刺を差し出して「次回韓国に来たら必ず連絡を下さい」と言い残すほど打ち解けたという。

 半世紀ほど前の話とは言え、北朝鮮の韓国に対する工作は今も陰に陽に続いている。だが、「21世紀の今、北のスパイなんているの?」と思っている韓国人は大勢いるし、親北政権下では関係機関の対北捜査権が剥奪されてしまった。「怪しい者」がいても誰も気付かないし、通報しても捜査する力がない…。そんな社会になりつつあるのではないか心配だ。(U)

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