
高市早苗首相が決行する衆院解散を巡り、世論の風向きが変わり始めている。解散への不支持が支持を上回る各社世論調査は、政権発足から3カ月を経て、祝儀相場から平時評価への移行を示す。対抗勢力たる「中道改革連合」に国民の期待は薄いが、中道という宗教思想を旗印にした、信者票の動向は選挙の行方を左右し得る。
評価を客観的に受け止め、首相は解散の大義について、国民の真の理解を勝ち取る説明を尽くさねばならない。内政の諸課題を凌駕(りょうが)する緊迫した国際情勢を国民に周知し、国家の危機感も共有すべきだ。それらの成否は、情報の発信力に懸かる。
高市政権下で経済や安全保障政策の軸足、また日本維新の会へと連立構成が変化した以上、通常国会に先立ち、民意を問うのは憲政の常道として正当化される。昨秋、積極財政や成長投資の骨子を臨時国会で披露、ガソリン減税など国民に行き渡る物価高対策の道筋を付けた。予算審議への影響を最小化するぎりぎりのタイミングでもある。
しかし、熱心に働く女性初の首相に、SNSを通じて惹(ひ)かれた「どちらかというと支持」にとどまる層には、解散の説明が届いていない。この層の離反は、政権基盤の脆弱(ぜいじゃく)性に直結する。きめ細かな対応を欠けば、支持層を固める好機を潰(つぶ)しかねない。
説明不足は、金融市場との対話で危うさも招いた。標榜(ひょうぼう)する「責任ある積極財政」のうち、積極一辺倒のイメージが先行し、国際市場に規律の欠如と映るリスクを、政権は過小評価していなかったか。円の独歩安に「一長一短」などと呑気(のんき)に構える姿勢は、国家の命運を預かる者として、あまりに安易ではなかったか。
「責任ある」について、国内総生産(GDP)比の政府債務や、特例公債依存度の低減など、政権は現在、市場への説明に余念がない。ベセント米財務長官が米金利への波及を注視する中、片山さつき財務相が緊張モードへ舵(かじ)を切ったのは妥当だ。
ダボス会議で痛感した、発信力不備による誤解は、わが国の国家信用に直結する。海外市場、投資家、格付け機関を意識した政策流布を管理徹底すべきだ。
安全保障政策では、昨年発表された米国家安全保障戦略(NSS)に加え近日公表された、米国家防衛戦略(NDS)のインパクトから目が離せない。だが、同盟国アメリカのベネズエラ作戦に象徴される西半球重視、これに伴い東半球に位置するわが国の防衛力強化の緊急事態について、高市首相は解散発表時、強調しなかった。
就任早々、首相の対米をはじめ諸外国との外交デビューは華々しかったが、やはり外交防衛分野での経歴が乏しかったのか。選挙戦術に集中するあまり、国家が置かれた危機管理の現状説明が薄まった、とすれば襟を正すべきだ。
解散後、初めての党首討論会で「自分の国は自分で守る気概」を訴えたのは前進だった。最高指揮官としての矜持(きょうじ)から、今日の厳しい安保環境を全国民に説明することは責務でもある。
首相動静によると、内閣官房の国家安全保障局長との面会頻度が高まっている。経済、安保に続きインテリジェンス政策を強調することとも符合する。
情報力強化は国力強化の中核を占める。だが真の情報力には、収集、分析に加え国益最大化に向けた発信の統制が必須。政権は与えられた評価を常に点検、学習し、十分な発信とともに前に進め。(駿馬)






