
高齢化と平均寿命の延びを背景に、今や高齢者の5人に1人、国民の17人に1人が認知症になると言われる。「認知症と共に生きる」ことが社会の大きなテーマとなり、その取り組みは各自治体で広がりつつある。
NHKBS「認知症とともによく生きる 丹野智文51歳 英国への旅」は、そんなテーマに大きなヒントを与える番組だった。12年前にアルツハイマー型認知症と診断された丹野智文さんは、世界に先駆けた取り組みを行う英国スコットランドを訪問し、認知症事業団体をつくった人物や同じ悩みを持つ人たちに出会う。
番組では9年ぶりに英国を訪ねた丹野さんが、認知症を抱えながらも自分らしく生活する人たちと再会。病気と共にいかに生きるかを問う。
スコットランドでは当事者の働き掛けによって、認知症の政策をつくる時には必ず当事者の意見を聞くという原則ができた。自治政府が掲げたのが「認知症と共によく生きる」。これは英国全体に広がった。
丹野さんにとって「病気が進行しても最後まで自分らしく、よく生きることができるのか」が最大の不安だった。今回の旅でその不安を認知症を発症した女性に率直にぶつけた。女性は「私はそのことは考えないことにしている。私が記憶を失ったとしても私が私であること、私の本質は変わらない」と明るく答えた。
哲学的で深い悟りの言葉に思われた。認知症の進行に悩む人だけでなく、全ての人の生き方に繋(つな)がる言葉である。






