日本人にとって「時間厳守」は空気のようなマナーだが、フィリピンではそれが国家レベルの課題となっている。遅刻が当たり前の文化「フィリピノ・タイム」にサヨナラを告げるべく、科学技術省が新年に合わせ時間厳守キャンペーンを開始した。
実際、現地での待ち合わせは超ざっくりだ。「何時何分」という細かい指定はまず出てこない。「午前中に」「午後に」「昼メシの後に」といった曖昧な約束がデフォルトだ。このカルチャーギャップに翻弄(ほんろう)される外国人は後を絶たず、ビジネスの場でも数時間の遅延は日常茶飯事となっている。
だが、この「ゆるさ」が激しい渋滞とセットになり、マニラ首都圏だけで1日約90億円もの経済損失を生んでいる事実は笑い飛ばせない。
なぜこれほど時間にルーズなのか。
スペイン統治時代、「偉い人ほど遅れて現れる」という歪(ゆが)んだ特権意識が持ち込まれたという説がある。実際、現代でも政治家や医師など地位がある者ほど、堂々と遅刻する場面に遭遇することが少なくない。
しかし、意識改革だけで解決するほど事態は単純ではない。ちょっとした悪天候でも起きる洪水、信頼できない公共交通機関、そして慢性的な渋滞。遅刻の「言い訳」には事欠かないのがこの国の現実だ。精神論で時間を説くだけでなく、まずはインフラを整備し、物理的に遅刻ができない環境を整えることこそ、政府の果たすべき最大の責任ではないだろうか。(F)






