トップコラム戦に負けても〝ウィンナー・ワルツ〟【東風西風】

戦に負けても〝ウィンナー・ワルツ〟【東風西風】

 今年も元日恒例のウィーンフィルのニューイヤー・コンサートを中継で聴いた。時差の関係で日本時間では夜の7時ごろに始まるので、ちょうどいい。「黄金のホール」の客席は盛装の男女で埋まり、新年の清々(すがすが)しい空気が伝わってきた。

 指揮者は、カナダ出身のヤニック・ネゼ・セガン。次世代の旗手と言われる50歳で、ニューイヤー・コンサート初登場。素晴らしい演奏だった。第1部から第2部へとだんだん盛り上がってきて、最後はいつものように「美しく青きドナウ」そして「ラデツキー行進曲」で締め括(くく)った。

 「ラデツキー」では指揮者が客席に降り、聴衆の手拍子で最高潮に達した。対照的な2曲の組み合わせはいつ聴いても絶妙だが、2曲とも戦争に関係している。

 ヨハン・シュトラウス2世の作曲した「美しく青きドナウ」は、普墺(ふおう)戦争でオーストリアがプロイセンに敗れた後、意気消沈している人々を「ウィーンっ子よ楽しく過ごせ」という歌詞で励ました。「第二国歌」とも言われる。

 父親のヨハン・シュトラウス1世が作曲した「ラデツキー」の方は、1848年、当時オーストリア帝国に属していた北イタリアの独立運動をラデツキー将軍が鎮圧したのを讃(たた)えて作られた。行進曲の勇ましさより、明朗さ、軽快さ、乗りの良さがこの曲の魅力だ。

 どちらの曲も明朗なのは当時の戦争は総力戦ではなく、勝っても負けても、人々にはまだ節度と余裕があったからだろう。古き良き時代だったとも言える。

(晋)

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