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男と女の神が出会う山

筑波山

 正月明け、初詣を兼ねて茨城県の筑波山に登った。

 平野に囲まれた筑波山は関東一円からよく見える。そのおおらかさ、開けっ広げなところがいいと言う人もいるが、登る山として魅力があるかと言えばそうでもない。

 877㍍の低山が日本百名山に入っている理由は歴史が古いこと。この山にはイザナギ・イザナミの二神が結婚によって神々を生んだという国造りの物語がある。

 麓の筑波山神社は縁結び、夫婦和合の神社として知られ、この日も年配のご夫婦や若いカップルが多く訪れていた。

 西に男体山、東に女体山。二つの神を宿すそれぞれの峰には立派な祠(ほこら)が祀(まつ)られ、二つの峰をつなぐ平らかな場所は神々が国割りの会議をしたと伝えられ、御幸ヶ原と名付けられている。そこに茶屋や土産物屋が立ち並び、山頂周辺に幾つもの電波塔が立つ。聖と俗が混在したような、何とも不思議な風景を醸し出している。

 男体山より6㍍高い、標高877㍍の女体山から見る眺望は実に迫力がある。むしろ、こちらが男の山ではないかと思えてくる。聞けば、中国の陰陽思想から来ているとのこと。他には太陽が昇る東を女性、太陽が沈む西を男性とする太陽信仰、地形的な特徴から、この配置となったらしい。

 下山は女体山から奇岩、巨岩群が立ち並ぶ白雲橋コースを下った。怪力の弁慶が巨岩を恐れて7度引き返したとされる「弁慶の七戻り」、「高天原(たかまがはら)」「胎内くぐり」といった岩々を巡る長い下りも退屈しない。

 筑波山は遠くから見ると、男と女の神が対峙(たいじ)し、時に惹(ひ)かれ合っているように見える。二神が交わり、神々を生む。この厳然たる自然の摂理を古代より今日まで人々に伝え続けてきた。

 「東の富士」と称される通り、一年の始まりを迎えるにふさわしい山である。

(光)

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