トップコラム安保政策が正念場の新年に【羅針盤】

安保政策が正念場の新年に【羅針盤】

ベネズエラ議会がデルシー・ロドリゲスを暫定大統領に就任させたことに対し、抗議するマドゥロ支持者(UPI)
ベネズエラ議会がデルシー・ロドリゲスを暫定大統領に就任させたことに対し、抗議するマドゥロ支持者(UPI)

 高市早苗首相は就任早々に、厳しさを増す安全保障環境に対応するため国家安全保障戦略など「安保関連3文書」の見直しを前倒しでスタートさせた。本格的な防衛体制強化に向けたリーダーシップは大変心強いものがあるが、この年末年始にわが国の安全保障にも重大な影響を及ぼす事案が生起した。

 新年迫る年の瀬に、中国が台湾を威嚇する「正義使命―2025」と称する大演習を強行した。『台湾独立』を唱える分離主義勢力と外部からの干渉勢力に対する厳重な警告発出が目的だとし、台湾を包囲するように海空演習区域を設定し、実弾射撃や海上・港湾封鎖訓練などを実施した。

 こうした恫喝(どうかつ)的な台湾包囲の軍事演習は今回で4回目であるが、まさにサラミ戦術と呼ぶ既成事実を積み上げる浸潤策で、回を重ねるごとに演習規模を拡大し、台湾領域へ近づいている。

 演習以上に問題なのは、「これまでも行われており問題なし」と黙過したトランプ米大統領の発言である。中国とのディールを睨(にら)んだ配慮かと推測されるが、中国の習近平国家主席の誤判断を招く危険な発言だと認識すべきである。

 米国に有利な通商合意を引き出す代わりに、台湾問題でトランプ大統領が譲歩すれば、中国は米国の反発を恐れることなく強気な行動に出る危険性が高まり、日本への威圧も一段と強まるであろう。

 2025米国家安全保障戦略(NSS)では、先(ま)ず「米国の利益第一」を謳(うた)い、対外戦略上の最優先は南北米大陸の西半球であるとし、次いでインド太平洋の重視を掲げているものの、対中戦略として、米単独での防衛を避けて、日本や韓国などに前面に立つ役割を果たすよう求めている。対中戦略上、米国が真に信頼できる協力相手なのか再考し対備する必要があろう。

 続いて新年の、米国が強行したベネズエラ大統領拘束の電撃作戦である。国家安全保障戦略で重視する西半球で最も反米的で、中国、ロシアとの関係を深めるマドゥロ政権を転覆したいのがトランプ政権の狙いであった。昨夏から空母打撃群をベネズエラ周辺に遊弋(ゆうよく)させ、軍事侵攻まで予想されていた。

 今回の衝撃的な斬首作戦は、防空網の制圧から内通者との連係まで実に周到な計画・準備のもとで極めて成功裡(り)に行われた。だが、ベネズエラに突然侵入して国家主権を犯し、現職大統領を連行した斬首作戦は、「力による現状変更」そのもので国際法に違反すると非難されているが、国際社会の反発は限定的である。

 東アジアの安全保障には米国の軍事プレゼンスが不可欠であり、直接的な米国批判はなかなか難しい。欧州も同様にウクライナ支援やNATO(北大西洋条約機構)からの米国撤退へと進展する可能性もあり、同様のジレンマを抱えている。

 非常に問題なのが「大国の力による現状変更」の横行である。ロシアのウクライナ侵攻や中国の南シナ海での一方的な島嶼(とうしょ)領有など権威主義的国家による現状変更を批判しにくくなり、危惧される中国の台湾侵攻にも糾弾しにくくなる。

 このような新たな安全保障の情況を踏まえてわが国は、「安保関連3文書」の見直しを行うことになる。特に、中国の「力による現状変更」の軍事行動の拡大と米国の関与・コミットメントの低下には、的確な対応が求められよう。東アジアの平和と安全には日米韓の緊密な連携が不可欠であるが、中国は日米韓の離間を図ろうと画策しよう。

 戦後、一貫して米国に頼ってきたわが国の防衛であるが、最早(もはや)、全面的な米軍来援、軍事力行使は期待できない。やはり他力本願を脱して自分の国は自分で守る国防体制を確立する必要がある。

 単に正面の兵器・装備システムや防衛予算の拡大に留まらず、日本の国家としての総合的な防衛力の強化、防衛体制の確立が望まれる。そのためには占領下で制定された現憲法の不備是正が必須の要件である。

(遠望子)

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