
「ドレスリハーサル」という言葉がある。演劇やオペラで、俳優や歌手が衣装を着用して本番同様の環境で行うリハーサルのことだ。一連の流れを確認して潜在的な問題点や改善点を見つけ本番までに修正する(『イベント用語事典』)。
本来なら優雅な芸術の場やさまざまなイベントで欠かせないものだろう。ただ、物騒な予行演習もある。昨年暮れ、台湾問題をテーマにした専門家による研究会では、中国の実戦さながらの演習を「ドレスリハーサル」と表現した。
衣装ならぬ軍服に着替え、さらに軍艦、航空機、ロケット・砲弾など物々しい舞台設定だ。年末に行われた演習はまさにそのクライマックスだったろう。ウクライナ戦争もその前兆は、ロシア軍による国境付近での大規模軍事演習だった。
だが、本来の「ドレスリハーサル」と違うのは観衆の存在だ。先の中国軍大演習は逆に言えば、特に自衛隊および米軍にとって、収集すべき重要な情報の“宝庫”と言ってもいい。ただの観衆ではない。
“演者”は「本番」をどう成功させるかに必死でリハーサルに励む。しかし、その段取りはレーダー、電波傍受、偵察衛星など電子の目でことごとく把握されている可能性があるのだ。
もっとも安全保障の場合は、リハーサルで済ませて「本番」に至らせないことが肝要だ。米軍のベネズエラ作戦は世界を驚かせたが、こちらは米議会にも事前通知しない情報漏れの徹底防止で隠密に行われた。






