
「推し活(おしかつ)」と呼ばれる若者を中心とする文化が流行(はや)っている。「推し活」とは、自分が好きになった特定の対象(推し)を応援する活動のこと。アイドルや俳優、声優、アニメのキャラクターなどその対象は多岐にわたる。
推し活の実態とはこうだ。例えば、アニメの男性キャラクターを推す知り合いの女子高生は、ライブ・コンサートや何かイベントがあれば遠距離問わず参加するし、多種多様な関連グッズを大量に購入する。話をすれば推しの話で盛り上がり、意識と生活そのすべてが「推し」中心なのである。
彼女いわく、ライブは「祈り」の場で、イベント参加や関連グッズ購入は「献金」だという。何個買っても足りるという感覚はないから出費はかさみ、本人はそれを「高額献金」だと笑う。スタジオを借り、大量に購入したグッズを部屋中に並べて、推しを中心に据えて「祭壇」を作り写真を撮る。SNSを通じて推しの魅力を発信し、ファンを増やすための「布教」をし、さらにはアニメの舞台や推しが訪れた場所を巡る「聖地巡礼」をする。
ドイツの社会学者マックス・ヴェーバーは、宗教とは「行動様式(エートス)」と定義した。人間の行動を突き動かす根源的な動機や態度のことである。
教義や組織を持たずとも、祈り、献身し、そこから生きる力を得る営みがあるならば、推し活は、宗教が社会から後退した時代に人々が手にした、最も身近な信仰形態なのかもしれない。
(風)






