戦前は徴兵制度があった。明治6(1873)年の1月10日、徴兵が始まった。以後昭和20(1945)年11月17日に廃止になるまでおよそ70年、この制度が続いた。
徴兵がなくなって80年以上が経(た)つ。江戸時代には徴兵はない。武士階級が存在していたので、徴兵の必要はなかった。明治6年の徴兵は、20歳以上の男子が原則として徴兵検査を受ける。合格者は抽選で3年間の兵役が課せられた。日中戦争(昭和12年勃発)の泥沼化以前は、実際に入営するのは20%程度だったという。
東大生だった夏目漱石(本名は金之助)も明治25年、分家して北海道に本籍を移した。徴兵制度はたびたび変わったが、当時は北海道に本籍を置く者は徴兵を免れることが可能だった。
そんなところから「漱石の徴兵忌避」の問題が出てくる。作家の丸谷才一が「徴兵忌避者としての夏目漱石」(昭和44年)というエッセーを発表したのがきっかけだ。
大部な評伝『漱石とその時代』を書いた江藤淳は、家庭内のもめ事が主たる原因で、徴兵忌避の話はそれに付帯する目的だったと結論付けている。それでも「付帯する」とはいえ、徴兵忌避が絡んでいることは否定していない。研究書には「徴兵忌避のため」と断定しているケースもある。
漱石にもこのような面があったということだ。日本で徴兵制が復活する可能性は今のところ低いと思われるが、いずれにせよ、世界各地の紛争の一日も早い終結を願ってやまない。






