
海外転勤における最初の「壁」と聞いて何を想像するだろうか。言語の壁や文化の壁など、さまざまな壁が浮かぶかもしれないが、筆者にとって最も大きく立ちはだかったのは住居の壁だった。
米国では都市部を中心に家賃が高騰しており、ワンベッドルームでも月2000㌦前後が相場となっている。が、問題はそこではなく入居審査だ。米国のバンクステートメント(銀行の取引明細書)やクレジットヒストリー(信用履歴)、さらには家賃の6倍以上の収入証明を求められることもあった。渡米直後で銀行口座や信用履歴を持たない海外転勤者にとって、これらの条件は極めて厳しい。
筆者も例外ではなく、複数の物件で入居を断られ、結果として約10日間、ホテルでの生活を余儀なくされた。異国の地において、住まいが定まらない日々は、じわじわと追い詰められているような気分にさせられる。
海外移住者にとって住居探しは、「制度の前提」がそもそも違う。米国の賃貸制度は、クレジットヒストリーを担保に成り立っている。信用履歴を積み重ねてきた人を基準に作られた仕組みの中で、ゼロから始める者はどうしても不利になってしまうのだ。
そのような中でも最終的には、保証人不要で過度な収入証明も求められないアパートが見つかり、無事入居することができた。
10日間のホテル生活を終えて、ようやく手にしたアパートの鍵には、米国での生活が本当に始まったことを告げる重みがあった。
(K)






