バッハ演奏家の鈴木雅明さんが学生の頃、《平均律クラヴィーア曲集》第1巻の自筆譜をファクシミリ版で入手した。嬉(うれ)しくて毎日眺めていたという。
『わが魂の安息、おおバッハよ!』(音楽之友社)で書いているが、ある時、ハ長調フーガの最後に「27」という書き込みのあることに気付く。数えるとこの曲は27小節でできていた。他にも数字があった。嬰(えい)ハ短調のプレリュードの最後には「39」。
バッハが数字を意識していたことを知って興奮したという。27は三位一体の3の3乗。39は十字架を表す13×3。どちらも意味深い数だ。
さらにラテン語のアルファベットに数字を当てはめて名前のBACHを数えると2、1、3、8で合計14。これにJ(ヨハン)9、S(セバスチャン)18を足すと41で、14の逆。さらにJ、S、Bは9、18、2で合計29。この第1巻の最後の言葉、「ただ神のみ栄光あれ」の頭文字SDGは18、4、7でこれも合計29。これはバッハのイニシャルと同じ数だ。また29はバッハの生年1685の16、8、5の合計と同じで、鈴木さんはその運命と数字の照合に圧倒される思いだったという。
数字にまつわる話は続くが、重要なことは数字の意味を通してバッハは宇宙的な秩序に思いを巡らせたことだ。バッハは神による宇宙の秩序を音楽の秩序として表現していた。
この曲は確かに天地創造のドラマを連想させる。
(岳)






