
しめ縄や輪飾りをかけて新年を祝う家は多く、官公庁でも門松を立てるところが多い。松飾りで街が装われるのを見ると、新年を迎えた実感が湧いてきた。歳神様を迎えるためで、松迎えと呼ばれている。
マツは常緑で厳寒の季節にもその色を変えず、節操と共に永遠の命を感じさせ、年賀の祝賀に用いられてきた。花言葉は「不老長寿」。山中や海岸にマツのある風景は日本的風景の代表だ。
各地にマツにまつわる説話があり、古くは『古事記』に倭建命(やまとたけるのみこと)の話が登場する。東征で尾張に向かい、尾津の岬に至り、一本松の所で、以前に置き忘れた太刀がそのまま残っていたのを見つけた。
守ってくれた松に感謝して、歌を詠む。「一つ松 人にありせば 太刀佩(は)けましを 衣(きぬ)着せましを」と。マツを人に例えて、太刀を佩かせようか、衣を着せようかと、親愛の情を表現した
日本にはアカマツ、クロマツ、ゴヨウマツなどが自生するが、興味深いのはゴヨウマツの仲間、ハイマツだ。これは高山植物で、本州中部で標高2500㍍以上の所に現れる。風雪に耐えて生き、峰の上部の地表を這(は)うように生育している。
立地条件が厳しいので生育は極めて遅い。高山植物の研究を続けている工藤岳さんが、高さ数㌢、幹の太さ数㍉の幼いハイマツを調べたら、樹齢は20年を超えていたという。1年の伸長は数㍉(『日本の高山植物』光文社)。花を咲かせるまで途方もない歳月がかかる。老齢でもなお若い。






