♪ポン、ピン、ポンピンポン~。文字にすると抑揚がつかず、いささか歯がゆい。これは毎朝6時前にNHKラジオ第2から流れてくる音色である。オルゴールのように聞こえるが、チェレスタと呼ばれる鍵盤楽器で、朝の目覚めに心地よく響いてくる。
最近、早起きしてラジオを聞くようになった北海道出身の知人から「幼い頃、牧場の朝の目覚めの音楽だった。何十年ぶりかで耳にし、懐かしさが込み上げた。いつの頃から流れているのか」と問われ調べてみると、ラジオ放送が開始された戦前からだというから驚かされた。
作曲は福島県出身の音楽家、熊田為宏。それも単に放送開始を告げる音楽ではなかった。インターバル・シグナルと呼ばれ、リスナーがチューニングで聞きたい放送局の周波数を選び出せるよう放送前に送出している。放送局の識別のため、全世界のラジオ局がそれぞれ独自のシグナルを流しているのだという。
シグナルといえば、そっけないが、音色は鉄琴よりも柔らかく、曙光を呼び入れるかのように響いてくる。チェレスタとはイタリア語で「天国的な」という意味だそうだ。幼子の頃に聞いたことのある人にとっては確かに天国的なメロディーだろう。
大晦日(みそか)の朝、チェレスタの音色に目覚め、除夜の鐘へと引き継がれて人々の心に響き渡っていく。これもまた、祖先から変わらず受け継いでいく音の風景の一つである。それが伝統というものであろう。良いお年を。






