トップコラム日本のクマ、スリランカのゾウ【上昇気流】

日本のクマ、スリランカのゾウ【上昇気流】

で出没、被害 2025年の「今年の漢字」に選ばれた「熊」を揮毫(きごう)する清水寺の森清範貫主=12日午後、京都市東山区

 日本漢字能力検定協会が募集した「今年の漢字」は「熊」だった。街の中にもクマが出没し死者は13人にも上った。

 そんな折、NHKのBS世界のドキュメンタリーで「ゾウが来る~スリランカ 人間と野生の衝突~」を見て驚いた。この島国では、ゾウと人間の衝突で2024年には約150人が命を落としている。

 スリランカのゾウは英植民地時代の乱獲などで減ってしまい絶滅危惧種に指定される。その後の保護政策で頭数は回復したが、ゾウと人間の共存が新しい問題を引き起こしているのだ。

 仏教国スリランカでは、ゾウは国を象徴する神聖な動物で、殺した場合の最高刑は死刑だ。自分の農地にゾウが侵入するのを食い止めようと誤ってゾウを殺したため、多額の罰金を請求された農民が頭を抱える姿には同情を禁じ得なかった。

 政府は電気柵を設けてゾウと住民の“棲(す)み分け”を図っているが、頭のいいゾウは支柱を倒して、難なく柵を越えて行く。それを係官がまた立て直すという具合だ。ゾウが民家に近づいたり、田んぼや畑に入ろうとしたりした場合は、爆竹を鳴らして追い払う。しかし、これがなかなか危険な仕事で、何人もが命を落としている。

 スリランカのゾウ問題は、開発によって生息地が狭められたことが第一の原因。一方、日本のクマ問題は、過疎化で中山間地や里山に人がいなくなったことが背景にある。どちらも過去には取れていたバランスが崩れた点では共通している。

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