
怒鳴り合う男性2人に挟まれて、大ゲンカを目撃したことがある。場所は文壇バー(経営者は女性)。時間は昼間。気流子を含めて3人で店へ入って間もなく、不穏な空気となった。
2人の間で気流子とは全く無関係の仕事上の話が、悪い意味で盛り上がってしまった。客は3人だけ。「そろそろ終わるかな?」と思っていると、逆にエスカレートする。気流子を間に挟んで怒号が行き交うのは奇妙なものだが、その場を離れるわけにもいかない。女性も口出しなぞ到底できない。彼女も、その場からいなくなるわけにはいかない。
2人の男性の職業は文芸雑誌の編集者同士。一人が編集長、もう一人が副編集長。どちらが右側か左側かは記憶がない。
双方からの怒号にうろたえながら、「仕方がないから、どちらに理があるのかを見てみよう」といった気持ちで判定してみたが、公平なところ、結果は「引き分け」だ。
どんな具合でケンカが終わったのかは忘れた。ただ、気流子から見て「編集長と副編集長の間には上下関係による微妙な違いはありそう」ということだけは分かった。
「編集長から見た副編集長」と「副編集長から見た編集長」は、ケンカの相手であっても対等でないことは何となく分かった。怒号のさなか、編集長はその視点で、副編集長もまた別の視点で、互いに対峙(たいじ)していたのだろう。長く思えたケンカがやっと終わったのも、そんな上下関係の働きの結果だったに違いない。






