トップコラム戦争未亡人を忘れない【上昇気流】

戦争未亡人を忘れない【上昇気流】

 戦後80年を記念した特集番組でNHKのETV特集「“戦争未亡人”と呼ばれて 百歳を超えた妻たちの戦後」は、出色の一つだった。NHKお定まりの反戦・平和論で纏(まと)めてはいるが、これまで正面から取り上げられることがなかった戦争未亡人に光を当てたのは評価できる。

 100歳を超えた戦争未亡人たちが辿(たど)ってきた過酷な足跡には涙を禁じ得なかった。遺族への年金は、軍国主義を助長してきたとしてGHQ(連合国軍総司令部)によって絶たれる。女手一つで子供を育てなければならなかった人も多かった。

 「英霊の妻」「靖国の妻」として尊敬してきた世間の眼(め)も、冷たいものとなった。敗戦で「お国のために」という戦前の価値観が否定されたことが大きかった。

 しかし戦争未亡人の存在の重みを、昭和を代表する作家の川端康成や映画監督の小津安二郎は見逃さなかった。戦後文学の最高傑作とも言われる川端の『山の音』では、絹子という戦争未亡人が重要な脇役となっている。

 小津の代表作で国際的にも評価の高い「東京物語」で原節子が演じた主人公、紀子は夫を戦争で亡くし、東京で一人暮らしをしている。舅(しゅうと)が再婚を勧めるが応じる気はない。

 戦後を振り返る時、そんな戦争未亡人を忘れるべきではないだろう。番組では、たくさんの孫やひ孫、玄孫(やしゃご)に囲まれた103歳の池田ふみさんが、亡くなった夫も「私を褒めてくれると思う」と笑顔で語っているのが印象的だった。

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