トップコラム「新鮮」に満ちた地球【上昇気流】

「新鮮」に満ちた地球【上昇気流】

 生命科学の専門家が書いた本(小林武彦著『生物はなぜ死ぬのか』講談社現代新書/2021年刊)の中に「桜を愛でる文化は日本固有のもの」との記述があって興味深かった。812年(平安時代前期)の第52代嵯峨天皇による花見についての記述があるという。「お花見の習慣は儀式的なものではなく、本能的なもの」という指摘も面白い。

 日本人がとりわけ桜を好むのは「変化」が理由という。満開の桜の花は「新鮮」の極みで、生命の力強さに溢(あふ)れている。桜以外でも同じことが言えるが、人は本能的に変化に惹(ひ)かれるものだ。

桜であれ何であれ、文化的・儀 式的なもの以前の本能的なものが重要というのが生命科学の発想のようだ。国文学者や民俗学者が言及することのない説得力を感じる。

 生命科学の観点からは、地球は常に生まれ変わり、入れ変わっている。変わらなければ、地球は存続することができない。だから、地球はおのずから「新鮮」に満ちているという発想らしい。

 このようなわけで、桜であれ紅葉であれ、見る人にとってはそれだけの価値がある。そのために人々は毎年、あちこちへ出掛ける。そうした場所はいくらでもある。

 それにしても、科学者の指摘するように桜のインパクトが紅葉以上に強いのは「散る=死ぬ」という生まれ変わりの時間の短さによるものだろう。桜であれば、その短さが地球の美しさを支えている。桜の在りようにも、それなりの理由があるようだ。

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