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ウオーキングは祈り!

 東北の故郷から知人が会いに来た。最寄りの駅で落ち合い、筆者の家まで10分ほど歩いた。2人とも60代後半だ。

 「こんなに歩くことは久しぶりだな。田舎では移動はもっぱら車だからね」と、友人が漏らした。他の知人が上京して来た時も異口同音で、歩くことに新鮮さを感じるようだった。日頃、運動をしていないことからすぐ息を切らし「東京観光はいいから、早く居酒屋に入ろう」と、歩くことに音(ね)を上げた同級生もいた。爽やかな秋空だったことも手伝ったのか、今回の知人はそんなことはなく、逆に多弁になった。

 「俺にとって歩くことは祈りなんだ」。筆者がちょっと宗教的な境地を披露すると、「それは分かるな。俺にとっては畑仕事が祈りだ」と返してきた。もう年金暮らしの彼は趣味程度だが、野菜作りが幸福感をもたらしてくれるのだという。筆者が小学生の頃、「母ちゃんは、畑にいる時が一番幸せなんだ」と話した、今は泉下の人となっている母のことを思い出した。

 都会暮らしでは、駅やコンビニ、そして仕事場へと、歩くことは生活そのものと言っていいが、よく言われる健康増進に加え、筆者は精神的な効果も大きいと実感している。

 特に独りで歩く時間は内なる自分との対話の貴重なひとときだ。脳科学的には、一定のテンポで足を動かすことで脳内の幸せホルモンが増加するので、それが多幸感につながると言われる。

 その上、パソコンに向かっていては浮かんでこない発想や言葉がふと頭に浮かぶことがある。だから、原稿書きに行き詰まった時、気分転換を兼ねて歩くことにしている。

 ウオーキング・ブームの背景には、人工的な環境から逃れて美しい自然を堪能できる上、祈りにも似た精神的な効果を実感できることがあるのだろう。

(森)

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