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短くなった秋とアーバンベア

 秋と言えば、筆者が連想するのは「天高く馬肥ゆる」という言葉だ。

 涼しい風が吹き、澄んだ青空の高い所にすじ雲やうろこ雲が浮かび、田んぼや野山が黄色や赤に色づく季節、そして馬まで肥えるほど豊かな収穫物(新米、柿、栗、ブドウ、梨、サツマイモなど)のある実りの季節ということだ。

 実際に幼い頃の秋は、田舎暮らしだったこともあって、その言葉に違(たが)わないものだった。秋山に登ると葉が黄色や赤に色づき、柿が色づき、栗やドングリがあちこちに落ちていた。季節の歯車も正確に時を刻んでいたように思う。

 ところが最近は、酷寒猛暑の期間が長引く中で、秋がいつあったのかと思うほど短い。今年は特に週末に雨天が7回も続いて、秋日和を楽しむ心の余裕まで持てずに冬を迎えてしまいそうだ。

 このような季節のリズムの狂いは、植物や動物にも大きな影響を及ぼすようだ。

 例えば、ブナやミズナラ、クヌギ、コナラなどブナ科の広葉樹の実であるドングリは元来、2~3年周期で豊作と不作が繰り返されるが、最近の異常な猛暑や降水量の偏りなどによって、開花・受粉のタイミングがずれて不作の年が多くなっているという。

 ドングリは外皮は堅いが非常に栄養価が高い。最近、連日のように市街地に出没するクマによる被害が報じられているが、クマが冬眠前に栄養を蓄えるために食べるドングリが不作の年は、市街地への出没がより長引くのだという。

 いわゆるアーバンベアの増加は、人の生活圏とクマの生活圏の中間地帯となる里山が過疎化や開発などによって崩壊したことの影響が大きいと言われるが、複合的な原因を抱えている。それをどう克服していくのか。人の知恵が試されている。

(武)

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