相次ぐクマによる人身被害でついに自衛隊が出動することになった。本来の仕事ではないような気もするが、対処力、動員力を考えると自衛隊に頑張ってもらうしかないようだ。
かつてクマ対策で軍隊が出動したことがある。大正4(1915)年、北海道苫前町三渓で起きた三毛別羆(さんけべつひぐま)事件で、ヒグマが開拓民の集落を2度にわたって襲い、死者7人、負傷者3人が出た。この時は、旭川に駐屯する陸軍歩兵第28連隊の将兵30人が出動した。
軍隊まで出動した背景には、人肉の味を覚えた巨大なヒグマが執拗(しつよう)に人を襲うようになり、地元の猟師や警察では対処できないと判断されたからだ。最終的に仕留められたそのヒグマは、体重が340㌔あったという。
この事件を題材に小説家の吉村昭が『羆嵐』を書いた。吉村は旭川営林局の農林技官、木村盛武の『獣害史最大の惨劇苫前羆事件』を参考にし、住民2人の回想を基に書いたという。気流子もかつてこの本を読み、ヒグマの恐ろしさが強くインプットされた。
一方、本州以南に生息する小型のツキノワグマは、それほど恐ろしくないのではないかという誤ったイメージを持ってしまった。しかし、今年はツキノワグマによる死者の数が10人に上っている。
自衛隊は自衛隊法の関係で銃を発砲するのではなく、おとり籠の設置などに従事するというが、極めて危険な任務である。隊員の安全に配慮しつつ迅速な対処が取られることを願うばかりだ。





