
衆参で少数与党のハンディを背負った上、公明党が連立離脱し、泣き面に蜂だった自民党新総裁の高市早苗氏。だが局面打開に向け、日本維新の会の吉村洋文代表(大阪府知事)、藤田文武共同代表と直接交渉を重ね、秋の臨時国会までに連立合意を取り付けた。
交渉で維新の吉村、藤田両氏の心を動かしたのは、政策実現に向かう高市総裁の「熱量」だったと言われる。「改革政党」を自認する維新のリーダーこそ、もともと政治家のやる気、積極姿勢をモットーとしていた。維新としての分厚い政策資料の数々を渡しておくと、「全部読み込み、要点も頭に入れてきた」「直球勝負の意気込みで交渉に臨んできた」などと、高市氏から感化された心境を打ち明けた。
並行して進められた、高市総裁就任後の自民の変容の一つが、鈴木貴子(衆院議員、旧茂木派)広報本部長の下の、SNSの積極活用だ。臨時国会前の焦点だった維新との連立合意書はもちろん、総裁、幹事長、政調会長など党役員の記者会見がX(旧ツイッター)上で公開されるが、会見と質疑応答の全文、ノーカット映像が見られるようになった。質問するメディア各社の名前も明示される。
政治家が発信する一次情報をいつでも参照できる体制は、国民に対する透明性確保になる。限られたアクセス権を持つ大手メディアによる印象操作、切り取り報道による誤解も避けられよう。総裁選の競争相手だった小林鷹之政調会長も「オープン、スピード、発信力」を基本方針に、毎週定例会見を行い、政策決定事項を党側から積極発信するそうだ。新執行部の意気込みが伝わる。
「日本と日本人の底力を信じてやまない者」とは、臨時国会の所信表明演説で、高市氏が述べた自己紹介だ。国内に漂う不安を希望に転換させる「強い経済」づくりに向けた党の新しい広報体制は、対象たる日本国民にじかに語り掛け、コメントを引き出す、新執行部の意欲の表れに他ならない。
内閣の方では「責任ある積極財政」の旗印の下、経済、食糧、エネルギーなど各安全保障分野で危機管理投資をする。また、未来の日本人技術の開花に向けて成長投資をする。株価の上昇、大企業の内部留保を背景に、官民共同で戦略的に財政出動することを表明した。総裁選で述べた持論や連立合意を再表明しただけだが、世論調査で71%が政権を支持し(読売)、若い世代(18~39歳)では80%に達した。世論に迎合し、党利党略のため原則的な立場や持論をあっさり捨てた最近の首相らとの違いに好感を持ったのだろう。
だが政権が少数与党であることに変わりはない。問題は政策ビジョンをどう実現するのかだ。基本政策に矛盾しない限り、各党提案にも柔軟かつ真摯(しんし)に傾注しなければならない。すなわち国会で法案を通過させるには、前を向くだけではダメで、熱量は野党ヒアリングにも投入が必要だ。対策が急がれる物価高の一要因たる為替の歴史的円安も、財政出動だけではさらなる行き過ぎを招きかねない。
高市氏は首相就任早々、トランプ米大統領との首脳会談に臨む。個人的に良好、また信頼ある関係づくりに努める一方、安倍晋三元首相の積極的平和主義に基づく「自由で開かれたインド太平洋」を受け継ぎ、「世界の真ん中で咲き誇る日本外交」に向け、主権者国民を代表した気概ある国士の姿勢も必要だ。「さらなる高みに引き上げる」とした日米関係は、愛国リーダー同士の熱量で支えられるものであってほしい。
(駿馬)





