
「クマも出て来る時は気をつけなきゃダメだよ。すぐ殺されるんだから。〝あっ、人間だ?と思ったら死んだフリしなきゃ」――。
時事漫談家・故ローカル岡さんのつかみの一節。クマの人里への出没が話題になり始めた頃だった。
今や逆転してクマによる人身獣害が深刻化している。クマに出合ったら「死んだフリ」が有効と言われた時期もあったが、クマは死んだ動物でも食べるためかえって危険というのが今の定説。都市部の住宅周辺もその生活圏に入ったとも言われ不安は募る。
対応策も、出合ったら慌てず大声を出すな、走って逃げない、ゆっくり後退する、などよく聞かされるが、言うは易(やす)く行うは難し。先の「死んだフリ」も、頭を腕などで覆い最悪の事態を回避する最終手段としては「あり」だという。
北海道に生息するヒグマは肉食性で体も大きく、体長3メートル、体重500キロに達するものもある。本州・四国部のツキノワグマは草食が主で体長も1~2メートルと小さい方だが、それでも労せずして獲物が得られる人里への“ 進出” は今後も続くだろう。
特にヒグマの獰猛(どうもう)さは明治の北海道開拓期に顕著に表れ、一家惨殺はじめ被害は甚大だった。『羆嵐(くまあらし)』(吉村昭著、新潮文庫)などに詳しい。
専門家は、気候変動で山の実などが不足したことによる人里出没を挙げる。しかし、それだけでは説明がつかないほどの不気味な動向だ。環境省も重い腰を上げたが、省庁を超えた取り組みが求められる。





