トップコラムマツタケに慰労された脱北者 韓国から

マツタケに慰労された脱北者 韓国から

 先週、韓国では二大名節の一つの「秋夕」を迎えた。多くの人はこの日を挟んだ連休を利用して実家に帰省する。先祖を祀(まつ)る伝統祭事をしたり、祭壇に捧(ささ)げたごちそうを囲んで楽しいひとときを過ごした人たちも多かっただろう。だが、この時期、逆に孤独感にさいなまれる人たちがいる。北朝鮮を逃れて韓国に定着した脱北者だ。故郷は軍事境界線で分断され、自由に往来できない北朝鮮。親兄弟や子供たちを残して来た人たちなら、切なさはひとしおだ。

 先日は、その寂しさを紛らわそうと、ある脱北者が日本に来た。3年前にソウルでインタビューに応じた彼とは、その後、会う機会がなかったが、今回たまたま筆者も日本に帰国中で、久しぶりに再会を果たした。会食の場に出てきたのは季節料理のマツタケ。彼は「北の一般住民には手が届かない」と言いながら、その風味を楽しみ、舌鼓を打っていた。酒好きで、新潟産の日本酒にもご満悦だった。韓国で食べる「日式」料理とは違う、本場の和食のもてなしだった。

 仕事柄、脱北者と会うことが少なくないが、個人的な印象を言うなら、実は「親日家」が多い。そして大抵は和食ファンだ。国営メディアなどに出てくる北朝鮮の公式見解(?)では、日本は「わが国を強占し植民地化した野蛮な日帝」ということになっているが、脱北者たちは韓国に来て全てを知るようになり、日本に目くじらを立てる人はいない。「秋夕」に故郷に行けない寂しさを胸に来日した彼も、マツタケ料理で慰労され、より確かな「親日家」になって帰国したことだろう。(U)

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