
大阪・関西万博の会場では期間中、最先端の機器類が幾つも公開された。水素燃料電池で動くクボタの無人運転トラクターのコンセプトモデルもその一つで、自動運転機能を備える水素燃料電池農機の公開は世界初だった。
水素と空気中の酸素を燃料とし、排出されるのは製造工程で作られた水だけで、農業分野での世界的課題とされる脱炭素化と省人化に対応する。出力は100馬力のディーゼルエンジン搭載トラクターと同等だ。
ただ、市場投入時期は未定で「同モデルを使い、ほ場での実証実験を行う予定」(クボタ)。展示場でも話が出たようだが、アフリカ各国の農地でも利用が望まれる。
アフリカが直面する課題は貧困、脆弱(ぜいじゃく)なインフラの他に、気候変動の弊害、土地の劣化、農業における技術・機械両面のリソース不足。さらに人口増や都市化が進み、耕地拡大は限界を迎えている。
今夏、横浜でアフリカ開発会議が開かれた。アフリカとの間の産業協力、経済圏構築が掲げられたが、それには当地の実情に合った技術協力や指導が必要。こうした課題に対し、幾つもの点で貢献し、弱点をカバーできるのは農業分野だ。
その一つとして、水素燃料電池農機の活用が考えられる。事業化における難所を“死の谷”というが、その谷を早く越えてほしい。農業以外の産業の優れた技術も活(い)かし、本当に使いやすい機器、道具類を作る――日本の強みである「ものづくり」が必要とされる時だ。





