
小泉さんについて書いてみたい。といっても、自民党総裁選で高市早苗新総裁に敗北した小泉進次郎氏のことではない。小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)と妻セツを描いたNHK朝のドラマ「ばけばけ」が始まったが、その孫に当たる小泉時(とき)さんである。
時さんは八雲の長男・一雄の長男として東京に生まれ、戦後は連合国軍総司令部(GHQ)を経て在日米軍司令部報道部に勤務した。当時、米軍取材で気流子も何度もお世話になったものだ。
痩せ型でにこやかな表情を絶やさない。常に親身にこちらのリクエストに応えてくださった。日米の「架け橋」的役割は、祖父の八雲が日本の文化伝統を海外に紹介したことと重なる。
報道部は略称PLO(Press Liaison Office)と言っていたが、パレスチナ解放機構(PLO)と混同されることもあり、途中MLO(Media Liaison Office)に変更したこともある。記者クラブに入っていないフリーのジャーナリストや写真家の貴重な窓口だった。
時さんの直属の上司ロバート・グリーンさんも大の親日家で、口癖にこう述べていた。「訓練で汗を流せば流すほど、戦闘で流す血は少なくて済む」。ドイツの名将ロンメルの言葉だ。
時さんは報道部を退職後は夫人と共に膨大な八雲の資料整理に当たったという。2009年に84歳で亡くなられたが、ご子息の凡氏も民俗学者として活躍され、系譜は息づいている。





