トップコラム流浪生活を振り返るスコット イスラエルから

流浪生活を振り返るスコット イスラエルから

 イスラエルでは、10月6日の日没からスコット(仮庵〈かりいお〉祭)が始まった。ユダヤ人たちは1週間、家の庭やアパートのベランダなどに建てたスカ(仮庵)と呼ばれる小さな仮小屋で食事をし、歌を歌ったり祈ったりする。ベッドやマットレスを持ち込んで寝泊まりする敬虔(けいけん)なユダヤ教徒もいる。

 ユダヤ暦の新年が明けて10日後、「ヨム・キプール」(大贖罪〈しょくざい〉日)の断食を終えると、もう近所のあちこちからスカを建て始める音がする。本格的に新しい年が始まる実感が湧く。

 ショッピングモールの入り口にもスカが置かれ、モール内はきれいに飾り付けがされていた。通りを歩いていると、屋根に使うシュロの木の枝を積み上げた乗用車が走っていた。屋根は、空が見えるように、わざと隙間を開けて覆うのだという。雨が降らないことを祈るばかりだ。ユダヤ人の子供たちは、スカの中に飾るデコレーションを学校で作って、持って帰る。

 古代イスラエルの民がエジプトでの奴隷生活から解放され、神が与えると約束したカナンの地に到着するまでの40年間を、荒野を流浪しながら過ごした歴史を振り返る。子供たちは毎年、隠れ家のようなスカで食べたり寝たりしながら、歴史を体感していく。

 まだテロ組織との戦争は終わっておらず、いまだに捕らえられてガザに連れ去られた愛する人の帰還を待つ家族たちがいる。そんな事情を抱えながら、それでもユダヤ人は、世界中に離散しても続けてきた伝統を守っている。(M)

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