
パリに次いで世界の観光客を集める世界遺産、モンサンミシェルは海に浮かぶ小島の上に立つ13世紀の僧院だ。
湾の奥まった所にあり、陸地側の広大な干潟では羊が飼われていた。ところが海面上昇で海岸の浸食が進み、僧院の対岸にあるサンジャンルトマの海岸沿いは、大規模な嵐や強い潮流があれば、水没の危機にさらされる。
調査によると、ノルマンディーの海岸線では70年間、干潟が毎年平均5メートル後退している。堤防が決壊の危機にさらされ、350頭の羊を飼育していた農家は、畜産業を諦め、仕方なくキャンプ場経営に切り替えたそうだ。
モンサンミシェルの絵はがきには、海に浮かぶ僧院を背景に、羊が牧草を食(は)む美しい景色が見られるが、風景は大きく変わろうとしている。数キロにわたって潮の満ち引きのある同地の海面上昇に、専門家は強く警告を発している。
モンサンミシェル湾は潮位差が大きく、海面上昇によって干潟が失われ、湾の景観が変わる可能性があることが指摘されてきた。そのため、干潟の保全活動を通じて、モンサンミシェルの象徴である自然の景観と生態系を守る努力がなされているが、海面上昇には抗し難い面もある。
島民数25人程度に対して、年間約300万人の観光客を集めるモンサンミシェルは、オーバーツーリズム(観光公害)でも問題になっている。本来はカトリック教徒にとっての聖地で、観光客の島への立ち入りの制限も行っているが、管理し切れていない。(A)





