今年は戦後80年の節目の年になる。今年も石破談話の有無で「お詫(わ)びと反省」が取り沙汰されている。しかし、戦後80年の節目に日本人として深く考えるべきことがある。現代日本の現状と諸問題はこの戦後の始まりに端を発していることを思い起こしてほしい。
昭和20年8月15日の「終戦の詔書」玉音放送には、天皇陛下御自身の肉声による無念のお言葉に全国民が打ちひしがれた。敗戦の屈辱と悔しさ、日本人の誇り崩壊と喪失感など当時の人々の心情を思い起こしてほしい。

終戦直後の皇族・陸軍大将の東久邇宮首相は、皇族を各戦域司令部に派遣し詔勅を知らしめ、軍の解体に異常無きよう徹底するとともに、軍官民の全ての国民に向けて敗戦を徹底的に反省し一億総懺悔(ざんげ)することが、わが国の復興、再建の第一歩だと国民の結束を呼び掛け世情鎮静化を図った。その結果として、占領下での物心困窮の廃墟(はいきょ)の中から、全国民が敗戦の屈辱をバネに祖国再建の気概を持って懸命に学び働き、見事に復興と経済発展を果たした。
しかし、豊かさに気が緩んだのか、「ゆとり教育」「働き方改革」などを進めて経済成長が止まり、「失われた30年」から抜け出せない。この終戦80年を機に敗戦から這い上がった日本人の気概を思い起こし、エネルギッシュな勤勉さを取り戻したいものである。
無条件降伏した日本のかじ取り行政権は全て連合軍に委ねられ、日本弱体化政策の柱としてWGIP(War Guilt Information Program=戦争罪悪情報計画)が推進された。その一環として国の在り方の大本を定める新憲法が制定され、敗戦後の日本国の仕組みや法制が定められたのである。
7年にわたる占領が終わり独立を回復した時が体制見直し、自主憲法の制定の好機であったが、なすことなく今日に至っている。国会で論議中の「憲法9条への自衛隊明記」は憲法改正の第一歩としては評価するが、憲法9条の問題は戦争放棄、戦力不保持の原則に端を発し、自衛のための必要最小限とする「専守防衛」政策にある。憲法9条と共に全面的に改正する必要がある。
国会での憲法改正論議は遅々として進まず、政治と金、物価高に消費税、令和の米騒動と内向きの話ばかりだ。日本の政治力の劣化、外交力の低下が心配されてならない。
ロシア、中国、北朝鮮では、今年は戦勝80年の節目の年として抗日戦争の勝利を誇り、民族意識、国防意識を高める契機にしている。80年前に先人たちが味わった敗戦の屈辱と戦後の苦難に思いを致し、戦争に負けるということはどういうことかを肝に銘じるべきだ。戦争には負けてはならない。『憲法守って国滅ぶ』があってはならない。
(遠望子)





