
バンコクには高架鉄道も地下鉄もできたが、渋滞都市の汚名はなかなか消えない。
せんだってナコーンラーチャシーマーで、出産のため産婦人科に向かっていたミャンマー人女性が渋滞に巻き込まれ、タクシーで出産したことがニュースになった。この時は交通警官が出産を手助けし、子供を取り上げた。
こうした渋滞による車内出産は、バンコクでは頻繁に発生する。近くの交通警官が出産を手伝い、産婆役を果たすというのも定番だ。バンコクの交通警官の中には、こうしたことを想定し産婆役を担う基礎知識と技術をマスターしているというのも少なくない。
なおこの種のニュースでは必ずと言っていいほど、タクシーの色や車種、それにナンバープレートの番号が取り上げられる。
タイ人の関心は、ニュースそのものだけでなく、縁起のいいものへのこだわりがすこぶる高い。理由は宝くじを購入する際の、番号選びの参考にするためだ。だから危機一髪で出産したタクシーの色やナンバープレートが、ニュース価値を持つ。色は購入する際の日取りの参考にする。タイでは日曜は赤色、月曜は黄色など各曜日に色が割り当てられている。これはタイの仏教文化に根差したもので、各曜日に仏教に関連する仏様がいるためとされる。
またタクシーで出産した場所に出向く人もいる。そこで宝くじの番号を占い、幸運という「二匹目のどじょう」を狙う。
「隣で蔵が建てば、わしゃ腹が立つ」という庶民の負の感情ではなく、「隣のおめでた」の幸運を自分の幸運につなげたいというプラスの感情は南国タイの風土とマッチして明るくていい。その明るさこそが、開運の入り口なのかもしれない。(T)





