8月16、17日放送のNHKスペシャル「シミュレーション。~昭和16年夏の敗戦~」を見た。「総力戦研究所」がテーマだが、フィクションとして制作された。放送後、研究所所長(陸軍中将)の孫から「祖父が卑劣な人間に描かれている」との批判が出た。
「フィクションという形を取りさえすれば、どんな描き方をしてもいい」ということになれば、現存の人物であっても「実際と全く違った描き方を自由にしていい」ということになる。「それは不当」というのが、遺族側の言い分だ。
9月17日、NHKの稲葉延雄会長は定例記者会見で「史実と異なる脚色をしたと指摘されても仕方がない面はあった」と述べた。このNHKスペシャルは、外部制作会社との共同制作だ。
NHKが半分は関わっているのだから、フィクションとはいえ、事実と正反対の人物像を描いてしまったのはいただけない。NHK側が外部の会社に押し切られた格好だ。
1000年前の藤原時代の実在の人物(例えば貴族の誰か)について、史実と明らかに異なるフィクションとして描くことは理解できる。その人物の何十代もの後の子孫が令和の今、存在しているとしても、文句を言う可能性は低いだろう。
しかし昭和の歴史的事実を正反対に描けば、現存する孫が強い不満を抱くのはあり得る話だ。NHK会長の指摘は、その点について一定の解釈を示したものだと言える。遺族側の批判は、虚構を巡る課題として重要だ。






