トップコラム作家と担当記者との間【上昇気流】

作家と担当記者との間【上昇気流】

かつてドラマで締め切りに追われる作家と、原稿の書き上げをひたすら待つ編集担当者のシーンがよくあった。社にとって重要な書き手には専門の担当者が付いてケアをし、自宅に伺っては恭(うやうや)しく原稿を頂くのが通例であった。

今はどうだろうか。メールやファクスなどが登場してから書き手と編集者との関係にも微妙な変化が出てきた。簡単に受け渡しができるようになり、特に若い担当者にとっては合理的な時代の流れと言えるのだろう。

もちろん、時代に抗(あらが)えないということもあってか、「妥協」を探る過渡的な動きもあった。電車の停車駅を指定し、その車両位置で編集者を待たせ、サッと渡してすぐまた乗り込む。スパイ映画の“機密情報”の受け渡しを思わせるような経験も懐かしい。

だが、そんな通信アイテムの変化にも頑として、というか意に介さず従来の手渡しにこだわる作家・先生方もおられた。担当者は自宅に伺い、原稿に目を通して若干の感想を述べ、そして先生の世間話などを拝聴する。

これは単に原稿の受け渡しだけの関係ではない。作家にとっては自分の原稿(成果物)への確認であり、雑談といえども次に繋(つな)がる「情報」なのだ。この地道なコミュニケーションという背景が大きい。

通信ツールの進化は著しい。それはそれとして、こうした書き手、作家の主張、社会への訴えを「対面」を通じて補強あるいは理解していくことも大事なのだなと思わされる。

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