
石破茂首相がようやく退陣を表明した。常識的に考えて退陣は避けられないのに居座ろうとしたのは、メディアや世論の援護に期待するところがあったからだろう。結果的にメディアは政治空白づくりに手を貸した。
NHKが8月に入って実施した世論調査で、内閣支持率が前月比で7ポイント上がり、石破首相が続投の意向を示していることに対しては「賛成」が49%で「反対」40%を上回った。新聞各社の調査もそれに似た傾向を示した。
しかし、回答者の年齢別の割合で若い世代が少なく、世論の正確な反映ではないとの指摘がある。世論は移り気だ。選挙に負け責任を追及される首相にも、時間が経(た)てば何となく同情したくなるのが人情。
メディアは世論調査のそんな一種のカラクリを知った上で、鬼の首を取ったように報じた。しかし、自民党にはまだ常識が残っていた。政治家は世論に敏感でなければならないが、世論調査に一喜一憂すべきではない。
2003年、イラク戦争反対の世論が高まる中、小泉純一郎首相(当時)は「世論に従って政治をすると間違う場合もある」と言い放った。乱暴な言い方だが事実である。激しい高まりを見せた「安保反対」の世論に対し、「声なき声」に耳を傾け日米安保改定を実現した岸信介首相(当時)の例からも明らかだ。
世論がムードや感情に流されているような時は、冷静に大所高所から判断するのが政治家の役割だ。いわゆる「上から目線」とは違うのである。






