石破政権は、政策や理念ではなく、「敵」であった安倍元首相への「怨念」を土台として出発したと言われる。そうなら、その政策運営は客観的な国益の是々非々の判断ではなく、安倍元首相の政策の否定を暗黙の前提とし、生来の「定見無く浮動する世論の動向を窺(うかが)う政治姿勢」の中で、極めて危険かつ不安定で、先行きの読めない運営とならざるを得ない。
その先行きの読めない政策の傾向は、米国のトランプ大統領も類似している。伝統的な同盟国との協力や、米国が過去に営々と築いてきた国際的信頼の維持より、直感的専断を優先する。しかも、プーチン露大統領への個人的好意に流されがちだ。
そのトランプ氏は、8月25日、李在明韓国大統領と会談した際に、安倍元首相について「偉大な人物で、良き友人だった」と回顧した。氏の安倍元首相への好意が、かろうじてMAGA米国の日本への姿勢を和らげている。しかし、これが永続する保証はない。
米国が、十分な力を持ち寛大で包容力がある時には、これに依存し甘えていても問題はなかった。しかし、国際社会における米国の政治力、経済力に衰えが見える今日、米国は利己的になり、大きな判断ミスを犯す可能性がある。
先の大戦において、米国は、当時のアジアで唯一の近代独立国家で、共産主義の防波堤として友邦となり得べき日本を、敵視して追い詰め、多大の犠牲を払って打倒し、戦術的勝者とはなった。しかし、その結果、共産主義の世界的台頭を許し、進出を目指した中国大陸は共産党に独裁支配を許すという戦略的大敗北を喫した。正に敵を取り違えたのだ。
戦後、米国は、旧ソ連との核開発競争に勝利し、冷戦を終わらせた。しかし、冷戦下で強く抑制されていた領土、民族、宗教等に係わる紛争が各地で頻発し、世界情勢は著しく不安定化した。さらに近年は中国が経済的に躍進し、ロシアもウクライナに侵略するまでに力を盛り返し、手を携え米国に拮抗する覇権を求める動きを強めている。国連は、殆(ほとん)ど機能不全だ。米国は相対的に力を失い孤立し、国内的にも分断・不安定化が進み、自らを危うくしている。日本に対しても、従来のように庇護(ひご)者である余裕を失い、利己的権益を主張する傾向を強めている。
日本は、今こそ対米依存から脱却すべきだ。対等な独立国家として、民主主義、自由主義の守護者となり、国際社会をリードすべきなのだ。
混沌(こんとん)の時代を脱し、非戦無責任憲法の改正が急がれる所以(ゆえん)である。
(遊楽人)






