
線状降水帯が熊本県を中心に発生し、大きな被害が出ている。鹿児島県の姶良(あいら)市などでも記録的な大雨を降らせ、土砂崩れや浸水被害をもたらしたばかりだ。
近年、毎年のように発生し至る所で被害を受けるようになった。次々と生じる雨雲(積乱雲)が列を成し、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞する。発生が増えたのは地球温暖化による。
青い空を背に積乱雲がもくもくと盛り上がる姿は、いかにも夏らしい。積乱雲は、入道雲、雲の峰などとも呼ばれ、夏の季語となっている。「雲の峰幾つ崩れて月の山」と松尾芭蕉も『奥の細道』の旅で詠んでいる。
この積乱雲がもたらすのが夏の午後に降る夕立。時に雷を伴い激しく降るが、短時間で止む。これも夏の季語。「温泉の客の皆夕立を眺めをり」は高浜虚子の句。ひと雨くれば涼しくなると、昔の人は夕立を嫌なものとは思わず、その風情を楽しんだ。
日本語には、春雨、五月雨、村雨、時雨など季節ごとに微妙に降り方が異なる雨を表す言葉が多い。しかし線状降水帯がもたらす雨は、風情を楽しむどころか、命の危険につながる。
温暖化を端的に実感するのは、夏の暑さと雨の降り方が以前とは全く違ってきたことだ。『百人一首』に村雨を詠んだ寂蓮法師の歌があるが、日本人は繊細な季節感を1000年以上にわたって育んできた。気候変動は、そんな季節感を破壊するような激しいものであることを知る必要があるだろう。






