
広島平和公園
18世紀の英国で人類の歴史をひもとき、戦史に記された犠牲者の数を調べ上げた人がいる。保守思想家のエドマンド・バークである。その数は約3600万人。戦争の破壊による世界の起源からの犠牲者はさらに多く、当時の世界人口の70倍に達すると推計した。
きょうの「広島原爆の日」にバークの言葉が蘇(よみがえ)った。戦争の歴史を直視し「無数の争いをひきおこすような傲慢さ、獰猛さが、人間の本性のなかに存在すること」に警鐘を鳴らしているからだ(水田珠枝訳「自然社会の擁護」、中公クラシックス『フランス革命についての省察ほかⅡ』に収録)。
それから数世紀、人類はさらに戦争を重ねた。犠牲者の数は一体、何倍に膨れ上がったことだろう。広島、長崎の被爆の犠牲も人類史に刻まれている。
バークの先人、英哲学者のトマス・ホッブズは人間を利己的動物と捉え「万人の万人に対する闘争」を人類の宿痾(しゅくあ)と見なしたが、それでは平和は到来しない。
バークは人間の「本心」を見据え、こう語る。「人類全体の声には、人間という素朴な名前が正しく使用されれば、それを妨げるわれわれのあらゆる規則にもかかわらず、有益な効果をもたらさずにはおかない、慈悲ぶかい、傷をいやすような何かが、存在する」(前掲書)。
保守の思想はここから始まる。利己ではなく利他、刹那(せつな)ではなく永劫(えいごう)。それは宗教的情操に裏打ちされている。保守こそ、真の平和の旗手たれ。追悼の日にそう念じる。





