
今年は「昭和100年、戦後80年」に当たる。時の流れに特に昭和世代は感慨にふける。「戦後は遠くなりにけり」と言われたが、昭和自体が遠い「歴史」となってしまった感がある。
先日、90歳前後のご年配2人と懇談する機会があった。話は先の戦時中に遡る。子供の頃、郷里の駿河湾に面する町で、敵艦に見立てた海上のブイに訓練生が操る練習機が特攻訓練をする模様を岸からよく見物したという。
練習機といっても「トンボ」と呼ばれた木製の2段翼機だ。先頭の教官機が模範飛行したのに続いて、時にはおぼつかない飛行ながらも次々と目標目がけて滑空していく。日本の敗色濃い時期だったのだろう。子供心にもその真剣な訓練に目を見張ったからこその思い出だ。
もう一つ、かつて小紙執筆者だった占部弘(うらべ・ひろむ)さんの証言だ。占部さんは旧陸軍士官学校出で防衛大教授を最後に退官された。子供の頃、広島・福山藩士だった祖父と一緒にお風呂に入った際、身体に幾つも刀傷があるのに気付いた。それは長州征伐の折、幕府軍として受けた傷だったという。
その話を聞いた時、胸が躍った。一気に幕末の歴史が近く感じられたのだ。遠い歴史ではなく、身近な人を介してその「史実」を共有する。
歴史書や小説、ドラマなどで得る興奮や感動もさることながら、肉声による体験談を通して自らがその歴史に関与しているかのような感覚は捨て難い。時代を経た世代の繋(つな)がりをこうした機会でも深めたい。






