トップコラム27年半ぶりの「該当作なし」【上昇気流】

27年半ぶりの「該当作なし」【上昇気流】

今回の芥川賞・直木賞選考は、両賞とも「該当作なし」という結果となった。両賞が同時に該当作なしとなったのは27年半ぶりのこと。ある文芸批評家は、芥川賞の「基準」がなくなってしまったので、選考委員らもお手上げとなったと述べていた。

近年、芥川賞の基準はなくなりつつあったのだが、選考委員らは各自の文学観を擦り合わせて何とか受賞作を決定してきた。今回は、このような弥縫(びほう)策では対応できない状況に追い込まれたということなのだろう。

芥川賞は「日本の近代文学史そのもの」という側面が強い。芥川賞受賞作がしばしば文学史を形づくる。文学史には一定の基準が必要だ。「あのころはああだったんだ……」という思いが芥川賞にはまつわりついている。

半面直木賞は、芥川賞ほどには明確な基準が求められない。「面白ければそれでよい」という自在さがある。その点では、直木賞の方が受賞作を出しやすいのだが、それでも今回はダメだった。

とはいえ、四半世紀ぶりの「両賞なし」であっても、どうということはない。一時のエアポケットのようなものだ。芥川賞であれ直木賞であれ、三島由紀夫賞であれ山本周五郎賞であれ、とんでもない作家が登場しないとも限らない。

ただ、作家志望者が「新しい基準を示してみよう」とか「新しい時代を描いてみよう」などと思ったところでロクな結果にはならない。「新しさ」は、後になって見えてくるものだからだ。

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