と会談した赤沢亮正経済再生担当相(内閣官房のSNSより).jpg)
急転直下の日米関税合意が、赤沢亮正・経済再生担当相を通じ、トランプ米大統領との間でなされ、大々的に発表された。米側は、ホワイトハウスが「トランプ大統領、前例のない日米戦略的貿易・投資協定を締結」と題するファクトシートを公表。日本は、内閣官房が「米国の関税措置に関する日米協議:日米間の合意(概要)」を公開した。合意は、今後の日本経済への波及効果が大きい。
トランプ氏は、日本政府の5500億ドル(約81兆円)に及ぶ新規の対米融資を掲げ、「史上最大の貿易ディール(取引)」とアピール。日本は対米自動車輸出(約6・7兆円=2024年)についての追加関税を12・5%に抑えた(2・5%から15%に増税)として、成果を強調した。
だが、両国間の合意文書は存在しない。トランプ氏の高関税圧力に対し、日本政府は8月1日から25%とされていた相互関税を15%に引き下げたことを「実」と主張するが、不透明な交渉経緯の精査、慎重なフォローが求められる。
合意のタイミングは、自公与党が参院選で47議席と、過半数を割る大敗の直後だった。石破茂政権が国民から明確な不信任を突き付けられた「弱り目」で、トランプ氏に譲歩を強いられた形は否めない。
WTO(世界貿易機関)協定では、米国が日本からの輸入自動車に課す関税は2・5%以下と定める。GATT(関税及び貿易に関する一般協定)第2条に違反し、国際法上の問題が指摘される。国民不支持の石破政権では、5500億ドル融資枠での譲歩を強いられると、こうした交渉カードの力も弱かろう。
参院選で大敗した石破首相は、続投の理由を「政治的空白を避け、関税交渉に取り組むこと」としていたが、拙速な合意に、交渉の主導権を奪われたのではないかとの疑念の声が出ている。日米関係維持の意義は認めつつも、合意内容のフォローは、参院選の民意を反映した新政権が、国会審議や国民への説明を通じて進めるのが筋だ。
日米の担当官が異なるトーンで語るのは、5500億ドル融資の中身だ。米商務長官は、抗生物質製造への融資を例に、米国主導で日本が必要額を拠出し、収益を日米1対9で分配すると強調。日本の負担で米国が利益を独占する構造に、SNSでは不公平との懸念の声が広がる。
赤沢氏は、米国政府に、日本の政府系金融機関が計5500億ドルの出資・融資・融資保証を提供すると説明。1対9の利益配分は出資分(全体の1~2%)に限定され、融資は返済可能な別枠と主張した。
従来、日本国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)の融資・保証能力は年間200億ドル未満で、目標達成には10年を要するとみられたが、赤沢氏はトランプ氏の任期中(2029年1月まで)を目標にするという。民間金融機関の協力を計画するが、巨額資金の動員には政府支援が不可欠で、国民負担への懸念も払拭されまい。
5500億ドル融資は、日本国内の産業の空洞化リスクも伴いかねない。米国は「長期的な安全保障」を掲げ、関税合意は日米同盟を経済的に強化し、関税リスクを軽減する基盤とはなる。政府は国会審議や国民との対話で透明性を確保し、内外の経済・通商政策の新たな起点となるよう、合意を綿密に進めるべきだ。(駿馬)






