
筆者が住むワシントン郊外のバージニア州では、野生の鹿を見掛けることが珍しくない。アパートの庭などに姿を現すこともあり、見るたびに心が和む。散策路を歩けば、すっと茂みから現れて目の前を横切ることもあった。
だが、かわいさだけでは済まされないこともある。運転中、突然路上に飛び出してきた鹿に気付き、慌ててブレーキを踏むといった、ひやりとする瞬間も経験した。
バージニア州全体の鹿は100万頭を超え、1990年代の約40万頭から倍増。特に都市部や郊外で増加しているという。車両との衝突事故は年間約7500件を記録。また、特に住宅の庭にあるツツジやバラ、果樹などは鹿の大好物で、造園への被害に関する苦情が多く寄せられている。
ハンターの数が減少したことが、鹿が増加した一因とされる。若年層の狩猟離れは全米共通のトレンドだが、バージニアでは特に顕著で、狩猟免許取得者数は過去10年で15%以上減少した。
こうした中、筆者の住む町では、夜間に公園限定で訓練を受けた狙撃手による鹿の駆除が行われることになった。公園内で実施するものの、住宅地に隣接している場所もあるため、銃声や子供の安全に関する懸念の声もないわけではない。しかし、約10平方㌔の町内で昨年度、道路沿いで回収された鹿の死体が32頭に及んだことが、駆除を実行する推進力となった。
無邪気に草をはむ鹿の姿は愛らしいが、庭木が食い荒らされたり、車道への飛び出し事故も後を絶たない。郊外での鹿との共存は容易ではないと感じさせられる。
(Y)






