トップコラム現代ロシアとゲルツェン【上昇気流】

現代ロシアとゲルツェン【上昇気流】

モスクワにあるロシア国立ゴーリキー文学大学の中庭に、ロシアの作家らに多大な影響を与えた思想家アレクサンドル・ゲルツェンの銅像が立っている。大学の建物が彼の生家だからだ。

ロシア文学者の奈倉有里さんが『夕暮れに夜明けの歌を』の中で紹介している。奈倉さんが留学していた2007年春、ゲルツェンの記念会が開かれたが、学生の間では人気がなかったようだ。

文学史のミネラーロフ教授は特別講義で「ソ連崩壊後、ゲルツェンは批判にさらされている」と語っていたという。さらに奈倉さんは、その頃から大学でも社会でも言論の画一化が進んでいたと報告する。

ゲルツェンの大著『過去と思索』(全7冊)が岩波書店から刊行された。読んでみると、文学部の学生に人気がなかった理由が分かる。彼は小説家ではなく、面白い物語を創作した人ではないのだ。

ゲルツェンは亡命貴族であり、ロンドンを拠点に活躍した西欧派の哲学者、思想家。この自伝的大作は、ロシアと西洋で出会った革命家や知的指導者らのことを描いた、第一級のドキュメンタリー作品だ。実在の人間が生き生きと描かれている。

もう一つ、言論が統制されているロシアで人気がない理由も分かる。現在の政治体制と思想的に対立する人物だからだ。英国の哲学者ジョン・スチュアート・ミルの『自由論』を絶賛し、人格の尊厳を何よりも重んじていた。専制政治とは真っ向から対立する考えの持ち主だった。

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