トップコラム夏目漱石とユリ【上昇気流】

夏目漱石とユリ【上昇気流】

自宅近くの緑道を歩くと、白ユリやオニユリが目を楽しませてくれる。ユリは今がちょうど開花時期になる。

気流子が小学生の時、担任の女性の先生が、授業の始まる前に大きなユリの花5本ばかりを教壇の横に生けた。先生としては少しでも教室を和ませようという気持ちだったのだろうが、授業中、ユリの匂いがきつくて息苦しいくらいだったのを覚えている。これが自分にとってユリの原体験となった。

夏目漱石の『夢十夜』の第一夜で、夢の中で「百年待っていて下さい」と言って死んでいった女性の化身として白ユリが登場する。そこでも「真白な百合が鼻の先で骨に徹(こた)えるほど匂った」とある。漱石にとってもユリは匂いのきつい花の印象が強かったようだ。

キリスト教ではユリは「純潔」や「無垢」の象徴とされる。特に聖母マリアと結び付くことが多い。レオナルド・ダビンチ描く「受胎告知」では、マリアに処女懐胎を告げる大天使ガブリエルが白いユリの花を捧げ持っている。

カトリック国の盟主を自認するフランスのブルボン王家の紋章「フルール・ド・リス」は、このユリを図案化したものだ。いろいろな所で目にするが、ただ花を美しくデザインしたというのではなく、そこには象徴的な意味が込められている。

『夢十夜』は漱石が実際に見た夢をある程度題材にしていると思われる。なぜユリと夢の女性が結び付くのか。漱石の英国留学中の記憶が反映したのかもしれない。

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