米軍のイラン核施設に対する精密攻撃が功を奏し、イランとイスラエルの戦火拡大がとりあえず収拾された。この「真夜中の鉄つい」と名付けられた作戦の主役がB2ステルス爆撃機である。
ノースロップ・グラマン社が開発・製造。水平尾翼も垂直尾翼もない全翼機という特異な形状でおなじみだ。冷戦期に旧ソ連の防空網を突破して戦略核ミサイル基地を壊滅させることを主目的とした。
初飛行は1989年と古い。当時ワシントンに駐在していた際、近郊の空軍基地で航空ショーが行われた。基地スピーカーから「ただいま最新鋭のB2ステルス爆撃機が会場上空に飛来します」と案内があった。
間もなく「ゴーッ」という爆音は聞こえてきたものの、一向に姿を見せない。ようやく「ただいまB2が通過しました。見えない、爆撃機です」とアナウンス。爆音だけを流して実際は飛行していなかったのだ。ジョークに観衆も「一杯食わされた」。
ステルス=見えない、といっても肉眼で見えないわけではない。レーダーに捕捉されないことに特化しており、今回のイラン攻撃もその隠密性を遺憾なく発揮した。しかも別編隊のおとり作戦まで併用した念の入れようだった。
B2は1機20億㌦以上もする世界一高価な航空機であり、管理費も膨大だが、まさに米軍の戦略的切り札であることを見せつけた。その成果は、中国や北朝鮮、ロシアに対する米国の決意と本気度を裏付けた抑止力と言える。