
米国の作家、オー・ヘンリーの作品に「最後の一葉」がある。有名な作品なので、ストーリーを知っている人も多いだろう。重い肺炎にかかり、窓の外から見える蔦(つた)の葉が全て枯れ落ちたら自分も死ぬと思い込んだ画家の女性の話である。
病人にとっては、窓から見える世界が全てである。そこに自分の運命を感じる人もいるかもしれない。最近、気流子も思いがけないけがで病院に入院することになった。カーテンで仕切られた部屋には窓があり、ふと「最後の一葉」を思い出したのだった。
窓は曇りガラスで、外は全く見えない。見えない方がいいかもしれない。何しろ外はものすごい暑さで、窓を開けたら熱風が入ってくる。梅雨明け前から猛暑が続く今夏は異常と言っていいほど。昼夜を問わず、救急車がサイレンを鳴らしながら走り回っている。
クーラーが利いている快適な病室では蒸し暑さはない。が、人工的とも言える環境の中で少しばかり体調を管理しにくい気がしている。ぜいたくというものかもしれない。
今夏には熱い闘いがある。参議院選挙である。各党はいろいろな公約を掲げ、国民の心を捉えようとしているが、果たしてその結果はどうなるか。票目当てのリップサービスもあれば、実現できるか分からない公約もある。
「最後の一葉」では、奇跡が起こって画家は回復する。だが、それは善意のウソがもたらしたものだった。選挙にはこのようなウソがあるのだろうか。