トップコラム歴史の町、飯能市【上昇気流】

歴史の町、飯能市【上昇気流】

天覧山からの眺望

埼玉県飯能市の大通り商店街は、江戸時代に六斎市と呼ばれる定期市が開かれた所。月に6回開催されたのでこの名がある。土蔵など歴史的建造物が幾つも残っていて、昔ながらの日本を感じさせる。

かつて林業で栄えた町で、木材を入間川の上流から荒川へと流したので「西川材」と呼ばれた。三島由紀夫が小説『美しい星』の舞台とした町だ。7月12日と13日には夏祭りが開かれる。

飯能八坂神社の祭礼で、6カ町の底抜け屋台が集合し、祝囃子(ばやし)の奉納と参拝が行われる。そして市内を引き回し、各所で引き合わせがある。市を挙げての大行事で、観光客も大勢押し寄せる。

以前、ここのシンボルである天覧山や多峯主山(とうのすやま)に登り、市内を散策したことがあった。が、明治維新での悲劇を知ったのは最近で、歴史学者、宮間純一さんの新刊『明治維新という物語』(中公新書)による。

飯能戦争と呼ばれる1868年5月の出来事だ。旧幕府の彰義隊から分離した脱走集団、振武軍が飯能に姿を現すと、能仁寺に本陣を置き、周囲の寺院に分宿した。彼らに協力する民衆が多くいた。

だが新政府軍の規模は大きく、戦闘が始まると彼らを圧倒し、飯能の町の大部分は消失する。民衆への見せしめとして破壊したという。一方、郷土史では民衆が振武軍に協力したことは伏されてきた。この「傷」を癒やしてくれたのは明治天皇の行幸だった。天覧山の名は、近衛兵の演習を視察されたことによる。

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