
梅雨をスルーして猛暑がやってきた。冷房なしでは暮らせない。そんな悲鳴が聞こえてくる。それで新聞に載っていた東京都議選の「余話」に目が留まった。
江戸川区で議席を獲得した国民民主党の天沼浩氏(同区前環境部長)が政治家を志したきっかけを「猛暑」としていたからだ(朝日6月28日付東京版)。
江戸川区では毎夏、熱中症になり、救急搬送される高齢者が後を絶たない。自宅でエアコンをつけていなかったからで、その理由は「電気代が高いから」。天沼氏は高騰する電気代が年金暮らしの高齢者の大きな負担になっていることを痛感し、出馬を決意した。
この記事に誘われて記憶が蘇った。「エネルギーが不足した時にまず第一にしわ寄せを受けるのは(社会の)下積みの人たちです」。朝日の科学部記者から同社初の女性論説委員を務めた大熊由紀子さん(現国際医療福祉大学大学院教授)の言である。
1979年の米スリーマイル島原発事故の直後、朝日労組の集会に呼び出され原発推進論を糺されたが、毅然として容認論を貫いた。東京電力福島第1原発の事故後、その考えに変わりはないかと後輩記者に問われた大熊さんはこう答えている。
「かわりません。エネルギーがあるから人工呼吸器も動く。エネルギーが乏しければ必ず弱者にしわ寄せがいきます」(朝日2012年1月18日付夕刊)。弱者の真の味方は誰か。明日、公示される参院選でしっかり見定めたい。