
ウィーンは最高気温が30度以上の「真夏日」から35度以上の「猛暑日」の日々が続く。26日は36度を記録したばかりだ。最高気温が40度を超える「酷暑日」ももはや現実的となってきた。
まだ6月末の段階でどうしてそんなに暑い日々が続くのか。とにかく暑い。それだけではない。蒸し暑い。アルプスの小国でウインタースポーツのメッカ、オーストリアで真夏日、猛暑日を体験することは10年前までは考えられなかった。クーラーを設置している住宅などなかった。それが今は手持ち扇風機がウィーンっ子の間で人気を呼んでいる。
蒸し暑い真夏日に多くの人々を引き付けるのはアイス屋だけではない。「カトリック教会」だ。普段は信者の数が少なく、寂しいが、気温が上昇するにつれて教会に足を向ける人々の姿が増えている。
新しいペテロの後継者となったローマ教皇「レオ14世効果」というより、アルベール・カミュの小説『異邦人』の主人公ムルソーに倣っていうならば、「太陽のせいだ」。石で建設された教会内は涼しい。暑い太陽の日差しから教会内に一歩足を入れるとそこは別世界だ。
教会の神父さんも飲み屋の女将(おかみ)さんのように「どうぞ一休みしてください」という誘いの声を掛ける。ウィーン大司教区の神父は「体だけではない。祈れば騒々しい社会のことを忘れて心も涼しくなる」と、粋な宣伝も忘れない。外が30度を超える日でも教会内は20度前後だ。魂の救いは別として、涼しさは保証されている。(O)