トップコラム珠洲焼の魅力を世界に【上昇気流】

珠洲焼の魅力を世界に【上昇気流】

能登半島地震からきょうで1年半。復興がなかなか進まず、被害の大きかった奥能登4市町の人口は5月時点で4万9301人。地震前から1割以上減少した。

人口流出を少しでも食い止めるには、主要産業である水産業、観光業、伝統工芸の復活を急がねばならない。しかし、輪島市の朝市通りや旅館など宿泊施設の再建にはまだ時間がかかる。伝統工芸では漆器輪島塗の工房が大きな被害を受け、再起への動きが伝えられる。

一方、珠洲(すず)市には珠洲焼という古い歴史を持つ陶器がある。古墳時代から中世に作られた須恵器の流れを汲(く)む。鉄分を含んだ珠洲の土を焼き締めたもので、釉薬(ゆうやく)は使わない。鉄のような灰黒色に焼き上がり、素朴で力強い独特の味わいが魅力だ。

14世紀ごろ日本海側を中心に広まり中世を代表する焼き物となるが、戦国時代に急速に衰退し、その伝統が長い間途絶えていた。それが昭和になって復活。珠洲焼に魅せられ珠洲に移り住む若い陶芸家も現れ、約50人の作家が制作に取り組んできた。だが、地震で全22基の窯元が被災。さらに昨年9月の豪雨被害が追い打ちをかけた。

それでも、作家らの奮起と支援者らの支えで制作を再開。大阪・関西万博の会場で2日から6日まで開かれる日本国際芸術祭で展示販売されることになった。

古い歴史と独特の魅力を持ちながら、輪島塗や九谷焼ほどの知名度のなかった珠洲焼。この機会に広く国内外にその魅力を伝えられればいい。

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