
主な生命保険会社の2025年3月期決算が開示され、大手損害保険グループと同様、過去最高益の更新が明らかになった。ついこの間まで、損保や生保の業界は法律違反の事例が摘発されるなど混迷を脱していないのに、はて? と思った。
保険には「利差益」「費差益」「死差益」の「三利源」がある。そのうち利差益は、予定利率によって見込まれたよりも、実際の運用収入が多い場合に発生する利益。
保険会社は契約者から集めた保険料を債券や株式の形で運用し、そこで利息が得られる。今回、金利上昇や株高で運用益が拡大し業績を牽引(けんいん)したわけだが、これがいつまで続くかは分からず、行方は決して楽観できない。
その一方で顧客獲得競争が激化し、保険業界のグローバル化で営業利益は厳しく、人口減少に伴い契約件数は減少。介護保険など公的保険の充実で、その顧客数は先細りだ。
その打開に窮するため、不正がはびこり発覚した。代理店に出向した社員が、競合他社の顧客情報を出向元に漏洩(ろうえい)していたのもその一つ。契約を獲得するのに、他社を誹謗(ひぼう)中傷する「風評営業」も以前、しばしば摘発された。
保険業は明治期に「相互扶助」という高い志を持って出発した。日本人は将来のために備えるという美質があり、保険に対する関心は高く、業界は国民のその特質の上に胡坐(あぐら)をかき、これまで高い契約率を誇ってきたと言えまいか。顧客への思いやりを持つ保険業の初心に戻る時だ。