
理工系教員から「月にまで人間を送ることができるようになったのに、どうしてくだらない争いが絶えないのか」との質問を受けた著名な政治学者。「月に人間を送ることに成功したのは、地球と月の間には、人間が住んでいないから」と答えた。
「人間という厄介な者がいるから、余計な困難が起こる」というのが政治学者の見解だ。質問した理工系教員も「科学技術が進めば、面倒なことは一切なくなる」と本気で考えていたわけではないだろう。
月に人間を送り込むのは人間の叡智(えいち)だが、当の人間同士は、性懲りもなく争いを繰り返している。が、争いを戦争と限定すれば、戦争の結果、科学技術が進歩することも歴史の真実だ。戦争となれば勝たなければならないから、必死で新しい技術を開発する。コンピューターだってもともとは、大砲の弾を敵に命中させるのが課題(の一つ)だった。
戦争抜きに新しい技術だけが生まれればこれに越したことはない。が、そういうわけにもいかないのが人間の厄介さだ。「科学の進歩とまっすぐ並行に人間も進歩する」というのが理想だが、そんな都合のいい話はそうそうあるものではない。
軍事力と非軍事力を組み合わせた「ハイブリッド戦争」では、人工知能(AI)やSNSのような技術が用いられる。
戦争を防ぐには、軍民双方の技術を活用し、抑止力を高めていく以外にはない。「力の空白」を生じさせないことが人類歴史の教訓だ。






